規制強化の中で置き去りにされる運転手の労働環境イメージ

コラム

規制強化の中で置き去りにされる運転手の労働環境

2016年、長野県の碓氷バイパスで15人が死亡した「軽井沢スキーバス事故」。さかのぼること4年、2012年に7人が死亡した発生した「関越自動車道高速バス居眠り運転事故」を受けて規制が強化された中での事故に「なぜ?」と思われた方も多いことでしょう。

多くの方は「関越道の事故を受けた”規制の強化”によって事故が減るだろう」と思われているかもしれませんが、運転士の多くからは「事故が減ることはない」「家族は怖くて夜行バスに乗せられない」と言う衝撃的な発言も耳にします。

規制強化と待遇の悪化

まず、悲惨な事故によって1日あたりの拘束時間や走行距離が厳しくなったのは間違いありません。また、未経験者を採用する際の教育の義務化やドライブレコーダーの設置義務化に向けた動きなど少しづつではありますが規制は強化されつつあります。

しかし、規制が強化されても運転手を取り巻く労働環境は改善することなく、かえって悪化しているのです。

バス運転手の世代別年収と平均年齢の推移

国交省が平成26年に発表した資料によると、平成14年における正社員の割合は89.9%だったものが69.7%(平成24年)にまで減少しています。それに伴って、バス運転手の平均年収(20~59歳、月収+賞与)も平成13年に494万円あったものが428万円(平成25年)にまで減少し、非正規雇用の運転手が増加している背景が伺えます。

反面、労働時間の平均は年2500時間と全産業平均の年2184時間を大幅に上回るなど、決して運転手の労働環境・福利厚生は良いとは言えません。

当然、離職率も平成14年に2.6%だったものが7.7%(平成24年)にまで跳ね上がり、運転手の平均年齢も46歳(全産業平均は41歳)と高齢化が進んでいます。

早い話、若い人から見て待遇的に魅力がない仕事になってしまっているのです。

負のスパイラル

このように、賃金は下がり運転手の成り手がいないとどうなるでしょう?

答えは簡単。

事業者は穴を埋めるために運転手に休日出勤や長時間労働を強い、運転手も世間並みの給料を稼ぐために休日出勤や長時間労働をせざるを得ない。

そして、限界を超えた運転手は離職し、残された運転手に負担がのしかかる。また、新人運転手を教育する余裕もなく経験不足のまま実車に投入し事故やミスを誘発する。

まさに「負のスパイラル」と言うわけです。

このようにバス運転手を取り巻く環境を考えれば「規制が強化されれば事故が減る」と言うのは表面上の対策であって抜本的な対策ではないことがわかります。

では、悲惨な事故を防ぐには?

バスは「人」が操作する乗り物であることを考えれば、無理を強いる現在の労働環境や運転手の高齢化を改善してあげれば事故防止に期待が持てます。つまり、雇用形態・年収・労働時間・年間休日などの福利厚生の改善です。そして、その改善によって若手の成り手が増えればそれに越したことはありません。

日本は少子高齢化によって、今後はますます若い人材の囲い込みが進んでいきます。この囲い込み競争に勝てない業界や事業者は衰退を余儀なくされるでしょう。現状の分析と把握だけで終わっている国交省の現状や事業者の動向を見ていると、本当に危機感を抱いているのか疑問に感じるのが正直なところです。

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